10行即興小説 あるカップルの場合A−2

月に帰るから別れようと突然言い出した彼の話を、
真菜は努めて冷静に受け止めようとしたが無理な話だった。
「真菜、コーヒー系苦手じゃなかった?」
普段飲まないカフェラテを注文してしまった真菜を、彼は笑う。
笑い事じゃないと真菜は思った。
どこか遠い惑星の月の国に彼は住んでいる。
その国の掟では、恋人が20歳を迎えたら国王に報告に
あがらなければいけないという。無視すると惨事を招くらしい。
「これからも真菜はずっと一緒にいてくれるよね?」
記念すべき20歳の誕生日に、真菜は彼の頭を本気で心配した。