10行即興小説 あるカップルの場合A−1

「ずっと好きでいたいから距離をおこう。」
突然の宣告に、真菜は文字通り目を見開いた。
「真菜のこと好きだから距離をおこうって言ってるんだ。」
彼はグラスのオレンジジュースに口をつけ、ふっと息を吐き出した。
「急に月に帰ることになってさ。」
「あはは意味わかんない。それ、なんのお笑いネタ?」
「今さ、別れ話してるんだけど。それは分かってくれるよね」
疑問符のつかない静かな口調。向かいの二つの瞳をみつめ、
真菜はようやく彼が真剣な話をしているのだと気づいた。
「えっと。全然分からない。最初から分かるように話してくれる?」

<続く>